カンバーランド長老キリスト教会

東小金井教会説教

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    2020年12月20日
    イザヤ書7:10~14、マタイ1:18~23
    関 伸子牧師

     「主の天使が夢に現れて言った」(マタイ1:20)。このみ言葉を聞くと、ああ、受胎告知のことだと、みなさんは、すぐにルカによる福音書に描かれたマリアへの天使のお告げを思い浮かべるのではないでしょうか。フラ・アンジェリコを始め、西洋絵画に数多く描かれている〈受胎告知〉はマリアへの告知です。しかし、マタイ福音書によれば、〈受胎告知〉を受けたのはマリアではなく、マリアの夫となるべきヨセフでした。夢の中で天使がヨセフにそれを予告したのです。

     婚約者マリアが身ごもったことを知ったヨセフは困惑します。神の前に「正しい人」として生きてきたヨセフにとっては、これは姦淫の罪、マリアの裏切りでしかありません。マリアを愛するゆえにヨセフが非常に苦しんだことは、マリアのことを「表ざたにするのを望まず、ひそかに縁を切ろうと決心した」苦渋の決断が物語っています。

     その時、神が介入します。ヨセフに天使が夢の中で語りかけました。ヨセフはただ、文字どおり夢のような体験に基づいて、その人生の道筋を大きく変えることになったのです。「恐れるな」。主の使いのこのことばからヨセフの戦いは新しい局面にはいります。ヨセフはマリアに対する神の特別な選び、神の恵みの計画、そして「ダビデの子ヨセフ」との呼びかけによるダビデの裔に対する神の約束、こられのことの重さと栄光に打ちのめされながら、眠りから立ち上がり、直ちに主の天使が命じた通り妻マリアを受け入れました。「恐れるな」。このことばは神の定めに服することを選ぶことばであったのです。

     それを考えるために、インマヌエルに目を向けたいと思います。天使は続けて告げます。「マリアの胎の子は聖霊によって宿った」こと。「マリアは男の子を産む」こと。そして「(ヨセフが)その子をイエスと名付ける」こと。我が子に「イエス」と名付けることによって、聖霊によって生まれた子がダビデの血筋に入れられました。ヨセフが主の天使の言葉に従ったことによって、救いが人々にもたらされました。神の言葉に従ったヨセフによって、救いの計画が始まります。

     インマヌエルとは「神は我々と共におられる」の意味ですけれども、マタイ福音書の最後、第28章20節でもイエスは「世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」と約束します。また、この名前には「神は救う」という意味があります。なぜならば、「この子は自分の民を罪から救うからである」(21節)。

     先ほどイザヤ書第7章10節から14節をお読みしました。この章は紀元前733年のシリア・エフライム戦争の際、南ユダ王国のアハズ王に語り掛けたイザヤの言葉を伝えています。アハズ王が即位した頃、アッシリアが息を吹き返し、パレスチナへの進出を測っていました。預言者イザヤは神に信頼する道を提案しています。若い王の心は揺れています。そこで神は「しるしを求めよ」と述べて決断を迫ります。アハズは「主を試すようなことはしない」と言いますが、断られても、神はあきらめずにしるしを与えます。一人の若い女性から男の子が誕生し、「インマヌエル(神は私たちと共に)」と名付けられます。

     子が生まれること自体、神の働きです。アブラハムの子イサクが生まれたことは、神の約束が空しくなかったことを示します。インマヌエルの誕生は、神に信頼しないアハズにとっては滅びであり、神に信頼する者にとっては救いである。いずれにしても、マタイも処女降誕だけではなく、「インマヌエル」という名に大きな意義を見ているのは明らかです。

     マリアの謙遜、ヨセフの困惑と従順、この人々の素朴さは、イエスに従う者の態度です。そして、インマヌエルがここで勝利したのでした。マリアはその重い神の選びに応えるために、ヨセフの支えをどんなに感謝したことでしょう。ヨセフはマリアにおいて、新しい正しさを学び、マリアを受け入れ得ることをどんなに喜んだことでしょう。

     私たちの現実には、この時のマリアのように、背負い切れないような負担を強いられることがあります。またこの時のヨセフと同じように、ひそかに悩みを抱え込むこともあります。しかし、まさにそういうところで、神さまは私たちに出会ってくださり、「インマヌエル」と告げられるのです。ヨセフに告げられた天使の言葉は、私たちにも向けられています。私たちがどんなに罪を犯しても、私たちと共に神さまはおられる。復活したイエスは「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(マタイ28:20)と約束します。アブラハムから始まって、全世界のあらゆる国の人々にまで祝福がもたらされる神の救いの約束は、このイエス・キリストによって成就されたのです。クリスマスに与えられたプレゼントの大きさ、それは「インマヌエル」、「神われらと共にいます」、すなわち、「神さまはイエス・キリストを通していつも私たちと共にいてくださる」。このイエスが私たちの救い主であることに驚き、喜び、感謝して、「ありがとうございます」と言い、人びとに語りつづける恵みを分かち合いたいと願います。お祈りをいたします。