霊によって新しく生まれる
2020年6月14日
民数記21:4～9、ヨハネ3:1～15
関 伸子牧師
今日、私たちがご一緒に読むヨハネによる福音書第3章に、ニコデモという人物が登場して、夜、主イエスのもとに来て対話をします。ニコデモはユダヤ人の長老でファリサイ派の人でした。ファリサイ派の人々は洗礼者ヨハネのことばを信ぜず、洗礼を受けなかったのですけれども、彼らの中にもイエスがエルサレムにおいてなされた御業を見て敬意を払った者がいた。その一人がニコデモであったのでしょう。
ニコデモはユダヤ教主流派の弾圧を恐れて、こっそり夜イエスのところに来て尋ねた。「ラビ、わたしどもは、あなたが神のもとから来られた教師であることを知っています。神が共におられるのでなければ、あなたのなさるようなしるしを、だれも行うことはできないからです」。
ニコデモの質問は、どうしたらあなたのように、神がいっしょにいてくださる生活ができるかということでした。それに対して主イエスは答えて言われた。「はっきり言っておく。人は、新たに生まれなければ、神の国を見ることはできない」と。するとニコデモは、「年をとったものが、どうして生まれることができましょう。もう一度母親の胎内に入って生まれることができるでしょうか」と聞いた。そこでイエスは「はっきり言っておく。だれでも水と霊から生まれなければ、神の国に入ることはできない」と、ニコデモの誤りを指摘された。この新しい誕生は、水と霊によってもたらされる。洗礼の水そのものや洗礼を授ける人が重要なのではなく、イエスを信じる信仰により、神が与えてくださる霊的に誕生することこそが中心であることが明らかになる。
主イエスはニコデモに言う。「あなたはイスラエルの教師でありながら、こんなことが分からないのか」（10節）。ニコデモの無知を非難しているというよりも、自力で霊的な現実をとらえようとする努力のむなしさを改めて強調したものと言える。 「天から降って来た者、すなわち人の子のほかには、天に上った者はだれもいない」(13節)。人の子であるイエスが天から下って来たのは、イエスを遣わした父なる神の思いを実現するためである。このイエスは、神の子として父なる神の懐の中にいて、父なる神の内にいるだけでなく、父なる神もイエスの内にいる。そして、このような神との密接な関係を持つ神の子イエスだけが天と地を結び付ける唯一の階段なのであり、最終的にイエスは天に昇り、父なる神の右の座に就く。
十字架の意味を例証するために、主イエスは14節でイスラエルの民が荒野を40年に渡ってさ迷った時の一つの出来事を引き合いに出される。先程、民数記第21章4節から9節をお読みしました。神の民が荒野で、今まで神から受けた恩を忘れた罪として蛇に襲われ、そのような災厄の中で自分の罪を認めて神に向かって叫び始めたとき、モーセは、青銅で蛇を作りそれを竿につけて遠くからも神的な印として見せるようにせよという特別の指示を与えられた。そしてさらに、「蛇にかまれた者がそれを見上げれば、命を得る」（8節）との約束を与えられる。
ヨハネはこの旗竿に十字架を重ねています。旗竿も十字架も、罪を認めて見上げた者に命を与える神の愛の現われですが、両者には違いもある。旗竿の蛇を見上げて命を得た者もいずれは死んでゆきますが、十字架に上げられたイエスを見上げる者は、永遠に生きることになる。
主は、あなたの主であって、「わたしを信じる者は滅びない」と言われます。「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである」（16節）と言われる。今、苦しむ人、無意味に生きている人は、新しくなれるのです。生まれ変わることができるのです。新しく生まれなければならないと言われたからといって驚くことはありません。風（霊）は、その欲するところに吹きます。霊によって生まれる者もそれと同じです。その音を聞いても、それがどこから来てどこに行くのかを知らない。聖霊と風とはここでは同じ言葉です。ギリシア語では空気、息、風、そして霊は同じ言葉です。ですから、当時の人はこの風のたとえをきいてすぐにわかる。聖霊は見えないし、人間的に証明されたり確かめたりできませんが、確かに実在し、私たちの内に働き、私たちを生かしている。人は風を捕らえることができません。そのように聖霊を捕まえておくわけにはいかない。ということは、信仰のことは、いつも「今日も新たに」なのです。
この時のイエスとの対話によって蒔かれた御言葉の種は、長い間、ニコデモの心の中に隠れていましたけれども、イエスの死後、思いがけない実りを生じ、ニコデモもまた、イエスの隠れた弟子となったのであり、隠れたキリスト者のひとりに数えることができるのです。私たちも聖霊によって新たに生きる喜びを生きたいと願います。お祈りをいたします。